コンペティション

KIPA 第3回デザインコンペティション2019ツナグ+DESIGN 受賞作品

KIPA 第3回 デザインコンペティション 2019 ツナグ+DESIGN
「令和の交番(KOBAN)SPACE」

 

新元号と共に、新時代の幕開けです。来年には、東京オリンピックも開催され、ますます世界の中の日本は注目され、様々な人々が行きかい、いろいろな接点、多くのふれあい、多様な情報交換が期待されます。 そのような日本の新時代に向けて、新しい解釈の「交番 ; KOBAN 」SPACEを考えてみてください。「交番」の歴史をひも解くと、日本独自の広囲な治安システムと考えられます。 明治7年に東京警視庁に「交番所」がはじめて設けられ、警察官が警察署から特定の場所に出向いて、交替で立番をする形をとっていました。つまり「交替で番をする所」ということから「交番所」となったものと言われます。この交番所はその後建物となり、そこで仕事をする現在の形に変わりました。明治21年10月に「派出所」、「駐在所」という名前で全国統一されましたが、警視庁創設当時の「交番所」という名称がそのまま「交番」という呼び名で残りました。現在では、「交番」という呼び名が国民間に定着し、また「KOBAN」という国際語としてもそのまま通用するほどになっています。ここで、我々は、新時代のふれあい = フレアイの場としての、交番システムに注目したいと思います。単なる治安の維持をはかる場所でなく、フレアイの場として。

 

交 = 人と人が交わる場所、情報を発信し、吸収する場所

 

番 = 二つ組み合わせて一組となるもの。対(つい)。異なるもの2つが合わさって一つとなること。

 

KOBANから → 新しい解釈のKO+BANへ = 人々のふれあいを促進する場所の提供。

増進する新地域システム・・・

 

みなさんの新しいイメージで、ふれあいの場としての新スペースを創造しご提案願います。

 


 

 

最優秀賞

交番×歩道橋
川島 達也・菊池 凌平

<首都大学東京>

 

 

 

日本の街並みが欧米の街並みに比較して美しく感じられない要因は、無造作に建てられた電柱や歩道橋、あるいは看板などであることは多くの人々が感じている。電柱の地下埋設化も進んでいるが歩道橋の景観対策は妙手がないのが現状であろう。今回の提案は、新しい都市機能を歩道橋に持たせて、市民生活の中に溶け込ませようとした提案であり都市景観解決への一つのヒントを与えてくれる優れた提案といえる。交番以外の付加施設も提案以外に考えられ、歩道橋の反語的魅力を広げてくれそうである。

 

講評:審査委員 川北 英

 


 

 

優秀賞

KOBAN CYCLING HUB
佐々木 順也

<京都工芸繊維大学大学院>

 

 

 

この提案が作り出す空間は美しく、作者のセンスのよさが光る提案だと思いました。従来の交番は、規模が小さく、都市景観的に魅力のあるものは少ないですが、この提案では、1階部分を交番とコミュニティサイクルステーションでシェアすることで、視認性の高い美しいファサードを形成しています。一方、プログラムという視点で見ると、二つのプログラムが相互作用によって新たなプログラムへと変容することを期待しましたが、ただ並置されているだけでした。また、これだけ大きく眺めのいい2階空間が交番のバックスペースの用途のみに利用するのはもったいないと思いました。二つのプログラムを並置するとどのような交流が生まれるのか?そして、交流を促すためにどのような建築的提案が可能か?を問う姿勢があれば、さらに良かったと思いました。

 

講評:審査委員 岩田 章吾

 


 

 

優秀賞

よどみとしての交番
大野 向輝

<東京理科大学大学院>

 

辻川 樹

<横浜国立大学大学院(Y-GSA)>

 

 

 

都市空間の中の人の流れに着目し、街路がまさに川の流れのように交差する渋谷の宇田川交差点を舞台に、足早に歩く人々の流れによどみを作り出すという誰にも分かり易いコンセプトの作品です。しかしながら具体的な案の展開は3次元的にうねる放物線状のコンクリートとスチールのハイブリッドアーチの連続体の中に交番ボックスが宙に浮かび、街を行く人々が一体何だろうと思わず留まり、そして交流する巧みな作り込みとなっています。またアーチが断面的には建築的スケールのストラクチュアからストリートファニチュアにまで連続的に変化し、平面的にも疎密のある配置による見え隠れと動きを演出する構成は、渋谷の街に出現した生命体を思わせ、背景のまちなみの描写と相まって、作者の並々ならぬ力量を感じさせます。優秀賞にふさわしい秀逸な作品です。

 

講評:審査委員 濵田 徹

 


 

 

優秀賞

灯る番
眞木 杏夏

<京都工芸繊維大学>

 

 

 

日本の諸都市において公共インフラの諸々にまつわるデザインは圧倒的に遅れている。それらの多くは、利便性や安全性、さらにはローコストであることが優先されるあまり、ありきたりで美しさからは程遠いものとなっている。本作品は、そのような状況に対してデザインの力をもって鋭く切り込む提案である。ガラスという透明性と閉鎖性を併せ持つ他儀的な素材で覆われた同心円状に展開する空間は、円形という全方位に等価な関係を取り結ぶ平面形状とあいまって、人々の安全の拠り所としての交番を都市空間における小さなランドマークとして美しい佇まいとともに実現するに違いない。公共空間の形成に参加する諸要素の一部に他ならない交番の、既存のステレオタイプなイメージを超えた新しい姿を提示するものとして評価したい。

 

講評:審査委員 角田 暁治

 


 

 

佳作

天翔る交番
三野 貴大・八嶋 星

<近畿大学>

 

 

 

学生アイデアコンペに期待される要素は、ダイナミックな発想力です。大気圏を超えて地球の安全を守る宇宙交番は、荒唐無稽という見方もあり、賛否がはっきりと分かれた案でした。しかし、現代の軍事環境やグーグルのビジネスを考えると、遠い未来のフィクションどころか、むしろ現実的な企画かもしれません。応募者の所属する大学では、実際『宇宙マグロプロジェクト』が進行しており、人工衛星で世界の海のマグロを監視しています。「令和」という時代をグローバルな視点でとらえ、世界中を駆け巡るリアルタイムの情報こそが、我々の安寧を司る鍵と考える一方で、そういう情報をドローンによって公開することで、地域に小さなコミュニティを生み出すというアイデアも、コンペの要望に答えられています。

 

講評:審査委員 岡本 清文

 


 

 

佳作

+GUESTHOUSE
門脇 紫乃

<東京理科大学大学院>

 

 

 

近年、東京でも京都でも“日本らしさ”の代名詞となっている町屋をどのように残してゆくかは建築家にとっての大きな課題といえる。今回の提案はその流れの延長線上にある提案ではあるが、ゲストハウス・海外旅行者・交番といった機能を合体させたコンバージョンはこれからの町屋保存の一つの答えといってもいい。空間処理も巧みであり高く評価したい。

 

講評:審査委員 川北 英

 


 

 

佳作

五條を護る赤灯
生田 海斗

<京都工芸繊維大学大学院>

 

 

 

歴史的建造物の保存再生コンバージョンの切り口には既視感がありますが、対象を京都の五条楽園に設定したことでこの計画は得も言われぬオリジナリティを獲得したといえます。交番・消防団施設・アーカイブセンター・小ホール・ライブラリー・備蓄庫と盛沢山な機能を一つの建築にまとめるために、段階的な改修プログラムも検討されています。地域の治安・防災への貢献と同時に、お茶屋建築の文化的価値やこの地に根付いた景観・街並みの保存、そしてこれに旧花街由来の赤色と交番の赤灯を重ね合わせることで建築に物語性を与えています。さらには今後の地域のお茶屋建築の保存の拠点作りと、地域住民や流動人口としての観光客も含めたふれあい空間の創出まで見据えた地域運営モデルも提案され、リアリティと存在感のある優れた作品となっています。

 

講評:審査委員 濵田 徹

 


 

 

佳作

海に浮かぶ KOBAN
矢野 玲・村田 恵未

<京都美術工芸大学>

 

 

 

日頃は「駆け込む」ところであろう交番が「やって来る」とは、若いエネルギーのなせる大胆不敵な感覚にまず驚きました。ましてそれが水上であれば、過疎化した島々へ市民生活の交番機能を日々届けることができるのみならず、例えば陸地が大規模災害に瀕した時には、海や川からの救助・救援活動など、利点は極めて大きいと想像できます。たとえ行政の壁があろうとも、超少子高齢化社会でのこのような変革は欠かせないのではないでしょうか。それから何にもまして、この手描きによる船のグラフィックは、とても素朴でありながら大変ファンタジックな詩情を感じさせられ、穏やかな時も激しい時も、波を越えてやって来る「お回りさん」と「安心」を大いに際立たせる絶妙な表現だと感心しています。

 

講評:審査委員 小梶 吉隆

 


 

 

佳作

スモールネスをネットワークするまち
上林 誼也

<京都工芸繊維大学>

 

 

 

 

守っていきたい日本の原風景の中に結点を設けることで、新たな安心、安全、コミュニテーを誕生させています。社会的課題である閉鎖的な建物の無人交番を開かれた「場」とすることで、「守られる暮らし」は「守りあう暮らし」に進化し、既にある建物を活用することで、新しく設けられた場であるにも関わらず、「なじみあう場」となり、よりまちを活性化することに繋がります。今だからこそ必要とされる提案だと思います。

 

講評:審査委員 小川 千賀子

 


 

 

佳作

Circus Police が繋ぐ地域の環
北岡 佳奈

<京都工芸繊維大学>

 

 

 

まず目を引くのは、魅力的なドローイングです。手書きのタッチはイラストレーションとしても成立する学生離れしたクオリティです。コンペに限らず、プレゼンテーションはデザインや設計において大変重要であり、自分のアイデアをより効果的かつ明確に伝える手段を持っていることは、将来の活動の強みとなるでしょう。案自体はとても素直で、交番を「交」と「番」に分け、それぞれに「フレアイ」と「治安維持」の要素を見出し、場の代用特性として円=Circus、四角=Policeという形態を与えています。テントとコンテナというレディメイド素材を使って移動や可変の可能性を持たせることで、地域の流動的なコミュニケーションを活性化させる考え方も良く理解できます。一方で、もう少し大胆な新時代への解釈と提案が欲しいところです。

 

講評:審査委員 岡本 清文

 


 

 

佳作

交番最小単位
角張 渉

<京都工芸繊維大学>

 

 

 

「空き交番」が増える中、その課題解決として、「繁殖する交番の実践」というシステムは意表を突いた解決方法だと思います。シンボルとしての交番が神出鬼没の交番になり、現存する交番との相乗効果として地域全体の安全、安心度が高まることにつながります。実現性のあるシステムデザインとして評価しました。

 

講評:審査委員 小川 千賀子

 


 

 

協賛企業賞

○○交番
藤田 正輝・田村 真子

<東京理科大学>

 

 

 

このプランにおいて、交番の持つ複数の役割や機能を、通常であれば一ヶ所に集約してしまうところを、公園全般に広く分散するという着眼点が、特に素晴らしいと考えます。分散することにより関連する空間規模が、点ではなく線へ面へと広がり、本来は安心安全であるべき公園が手放しで安全と言えない現況下で、公園全体が本来の守られた場所となり、様々な年代層のコミュニティーの形成を促進させることが高評価です。また、主な交番機能を時間経過に伴い場所移動していく考え方も、それらのコミュニティーとの積極的な接触を可能にし、安心安全の強化も含めて良く考えられています。このプランを活かすために最も必要なことは、警官と市民との心的な距離感を近づけること。言い換えると互いに信頼感を持つこと。そのようなことも考えさせられました。

 

講評:審査委員 石津 勝

 


 

 

協賛企業賞

地域に根差す子供園

もっと便利、コインランドリー。

難波 亮成

<東北大学>

 

 

 

私が幼い時、交番には常にお巡りさんが2人くらいいて、地域の見張り役と同時に道を教えてもらったり、住人同士のもめ事を解決したり、町のよろず相談役のようでもあったと記憶しています。この作品は、建築の在り方で地域の繋がりを作り出すことが見張り役としての機能を果たすはずという新しい意味での交番を提起していて、建築がもつ可能性を感じさせられました。防犯上の面から本人の意思とは切り離されたところで地域との関りを断たれている子供たち、そして他人の事に関心を持たなくなった大人達が繋がり、地域全体で子供の安全を見張る装置となるという発想は、単純にお巡りさんがいる交番にどんな付加価値を付けるかという発想とは違ってとても面白いなと感じました。

 

講評:審査委員 立山 智佳子

 


 

 

協賛企業賞

本の消えた図書館
朝日 智

<東北大学>

 

 

 

まずはタイトルと、形にとらわれない発想に興味を引きましたのでこの作品を選びました。ただ、この作者は募集要項に記載されている交番を「人々が行き交う場」と捉えて作品を考えたのだと想定したうえで選びました。と言う意味では少しおまけが入っています。この作品の面白さは、現代のタブレット社会を上手く扱っており、例えばスターバックスのようなカフェ等にパソコンを持ち込んで勉強や仕事をしている人、また公園に子供たちが集まってゲームをしている姿をよく見かけますが、それと同じように、そこに行けば会話は無いが同じ目的の人達が集まり、近くに人の気配はするが干渉はしない。という現代の安心感を持てる場としているところに着目したことに面白さを感じて選びました。

 

講評:審査委員 笠松 哲司

 


 

 

応募点数:43点

登録学生数:55名

最終選考数:37点

入賞点数:14点

 

 

総評

KIPAデザインコンペティションは学生へのインテリアプランナーの認知度向上と、建築やインテリアデザインを志す学生からの提案により、世代と社会とをつなぐことを目的としてスタートしました。第3回は新元号と共に新時代を繋ぐ新しいフレアイの場としての可能性を探るべく、また国際語としての「令和の交番(KOBAN)SPACE」をテーマとしました。

課題では立地も規模も自由とし、いかに本質的な未来を捉えるかという命題を秘めることにしました。応募作品は社会的な課題解決を図るもの、都市や建築との関係性から生まれる空間そのもの、移動を前提とするもの、地域社会に向き合う計画など、それらが輻輳するすばらしい提案が寄せられています。また新しい傾向として、情報そのものを扱った作品もあり、若い世代の先鋭的な感性に改めて気付かされた次第です。回を追うごとにレベルが向上し、CGも手描きもみごとな表現となり、まさしく多様性を感じることができます。評価の高かった作品はそのコンセプトと表現が絶妙に交錯し、見る人を魅了することに成功したと言えるでしょう。テーマからは提案の硬さを懸念していたものの、豊かな表現で懸命に社会を支えようという力作は、ゆとり教育世代と呼ばれる評価に反して、大変心強く感じることができました。

最後になりますが、このコンペティションには全国から多数の応募が寄せられました。遠方から高いレベルの高い作品が多く寄せられたことは、情報化によるグローバル世代の息吹を垣間見ることができます。まさしく令和の時代を創っていく若い世代の作品がここに集い、応募作品展が開催できたことに大いに喜びを感じています。

 

一般社団法人 関西インテリアプランナー協会 会長 小梶 吉隆

 


 

<審査委員>

 

審査委員長

・小梶 吉隆 (一般社団法人 関西インテリアプランナー協会 会長)

 

審査委員

・石津 勝 (大阪芸術大学 准教授)

・岩田 章吾 (武庫川女子大学 教授)

・岡本 清文 (近畿大学 教授)

・小川 千賀子 (株式会社デザインクラブ 代表)

・角田 暁治 (京都工芸繊維大学 准教授)

・笠松 哲司 (グラフィソフトジャパン株式会社 シニアセールスマネージャー)

・川北 英 (京都美術工芸大学 教授)

・立山 智佳子 (高島屋スペースクリエイツ株式会社 デザインチームリーダー)

・中村 俊郎 (イチマルヨンロク デザイン 代表)

・濵田 徹 (株式会社イリア 関西事務所 所長)

・藤本 英子 (京都市立芸術大学 教授)

 

学生デザインコンペティション部会

実行委員長:伍賀 達哉

メンバー:小野 道也、神谷 剛、杉村 修一
馮 植、矢野 梨花子

Award Book:1046 design

 

協賛企業(順不同)

高島屋スペースクリエイツ 株式会社 http://www.ts-create.jp

グラフィソフトジャパン 株式会社 http://www.graphisoft.co.jp

有限会社 画箋堂 http://www.gwasendo.com

有限会社 ハブ硝子 http://glasmond.jp

ドリームベッド 株式会社 https://dreambed.jp

株式会社 サンゲツ https://www.sangetsu.co.jp

関ヶ原石材 株式会社 http://www.sekistone.com

TOTO 株式会社 http://www.toto.co.jp

東リ 株式会社 https://www.toli.co.jp

株式会社 デザインクラブ http://www.designclub.co.jp

株式会社 ユニオン https://www.artunion.co.jp

タキロンマテックス 株式会社 https://www.t-matex.co.jp

アイカ工業 株式会社 http://www.aica.co.jp

株式会社 YAMAGIWA http://www.yamagiwa.co.jp

株式会社 天童木工 http://www.tendo-mokko.co.jp

パナソニック 株式会社 https://panasonic.jp

スリーエムジャパン 株式会社 http://www.mmm.co.jp

ルイスポールセンジャパン 株式会社 https://www.louispoulsen.com/ja-jp/

アイリスオーヤマ 株式会社 https://www.irisohyama.co.jp

大光電機 株式会社 http://www.lighting-daiko.co.jp

株式会社 岡村製作所 http://www.okamura.co.jp

株式会社 カッシーナ・イクスシー http://www.cassina-ixc.jp

コクヨ 株式会社 https://www.kokuyo.co.jp

株式会社 インターオフィス https://www.interoffice.co.jp

株式会社 川島織物セルコン https://www.kawashimaselkon.co.jp

美和ロック 株式会社 https://www.miwa-lock.co.jp

矢橋大理石 株式会社 http://www.yabashi-marble.co.jp

ルノン 株式会社 https://ssl.runon.co.jp

株式会社 オリバー http://www.oliverinc.co.jp

 

 

主催

一般社団法人 関西インテリアプランナー協会

〒541-0052 大阪市中央区安土町1-7-13 トヤマビル本館 9F

TEL:06-6266-5735 FAX:06-6266-5745

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