コラム

Vol.2 比較優位


「比較優位」(Comparative Advantage)という概念が心理学を取り込んだ行動経済学の中で頻繁に用いられています。この概念はコラボレーション(Collaboration)・協働活動と同じような意味ですが、それよりももっと目的と方法を意識しています。 「餅屋は餅屋」、「馬は馬方」、「蛇の道は蛇」、さらに「悪魔は悪魔に」ということわざもあります。家内制手工業の江戸時代からこの概念はありました。すべての作業、工程で他人より優れていたとしても、それぞれが得意な作業や工程に専念したほうが、全体としての生産性が高く、利益が多くなります。浮世絵の制作はまさに水平分業、垂直分業の複合体制でした。絵師⇒彫師⇒刷師、紙漉き / 絵具 / 版元というように。 「比較優位」の考え方が生まれたのは、産業革命後の19世紀初頭です。自由貿易の拡大による経済拡大と成長が背景にあります。産業が高度に発展し、生産性を高めるには技術の高度化と多様性が求められます。商品やサービスにも高度化と多様性が求められます。 国際航空事業では地理的な路線の水平分業、運賃の垂直分業に加えて、時間的な分業も「アライアンス・Alliance・連合」として進められています。また、きわめて政治的な事では多国間の軍事同盟もアライアンスと呼ばれます。国際的な規模で分業を進めようとするTPP(Trans-pacific Partnership・環太平洋連携協定)が進んでいる一方、反TPP、保護貿易主義、ナショナリズムが対抗勢力として生まれ、新たな問題をとして存在しています。 建築業界も多様な職種の連携で成立していますが、他方では企業が合併吸収したり、分離独立したりしています。この場合は、作業規模、生産規模とのバランスをとるためになされています。 アーティスト、デザイナーもその仕事の規模によって水平分業、垂直分業を取り入れると生産性が高く、利益も大きくなります。ここで重要なのは技術力が優れているから分業するということ。技術力がなければ、単なる下請けになってしまいます。日本の中小企業で生き残っていけるのは大企業と対等に連携を組んでいける企業と、連携を組まなくても独立、自立している企業だけです。他社との比較で常に優位を維持し続けることが前提となります。さらに、重要なのは連携を組む企業、グループ、個人が「互恵」、「双方に利益がある」ことです。ここでいう「互恵」は金銭的なことだけでなく「情報」や「お互いを思いやる気持ち」も含まれます。日本には昔、「講」とか「結」とかいう「互恵」の組織がありました。「ワークシェアリング」にもこのような「思いやる気持ち」があります。

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