機関誌table

table-vol.12_ホテル京阪 天満橋駅前_2022 03



作品名/ホテル京阪 天満橋駅前(大阪市中央区天満橋京町2丁目)

グランドオープン2022年4月3日

建築主:京阪建物株式会社 株式会社ホテル京阪

設計/株式会社安井建築設計事務所
施工/株式会社鴻池組
敷地面積:1,168.50㎡
建築面積: 835.95㎡
延床面積:10,526.08㎡
規模:S造一部SRC造 地上17階、地下1階、59m
着工2019年5月20日 竣工2021年 1月31日

「現代の旅籠」

京阪電鉄天満橋駅前の土佐堀通りに面して建つビジネスホテルである。 計画地は熊野への参詣道の起点として賑わい、江戸時代には八軒の船宿が軒を連ねていたことに由来し八軒家浜と呼ばれた場所である。 水運で京都と大阪を結ぶ港であったかつての八軒家浜。京阪電鉄はその人や物資を運ぶ役割を現代に引き継いでいること、京阪ホールディングスの本社がここ天満橋にあることから、歴史と文化に調和し、京阪ブランドを体現するホテル計画とした。 外観は押出成形セメント板を数種組み合わせながら、現代の旅籠をイメージする窓割、色彩計画を行った。北側の土佐堀通り側の2階は屋上緑化を行い、通り景観に潤いをもたらしている。 敷地内に高低差があり、石垣をはじめとする既存擁壁や既存建物の地下構造物を避けながら建物基礎を計画した。 高さを60m未満に抑え、客室数を最大限確保するために、全フロア100㎡区画により特別避難階段の設置を免除する計画とした。

「京都から熊野へのつながりを表したインテリアデザイン」

熊野詣にあたり、京都の伏見から三十石舟でこの八軒屋で舟を降りて、ここから歩いて熊野まで歩いていたということから、京都と熊野をインテリアデザインモチーフとした。 1Fロビー・レストランの天井は、黒色の天井面に竹竿縁を設え、壁は墨色の左官仕上げの塗り壁とした上に、竹のアートを設え、現代風のシックな京都を演出した。 レストランはホテルの朝食だけに限定せず、オールデイ対応できるカフェレストランとしても利用できるよう、バーカウンターを中心に配置した。カジュアルでくつろげるデザインの椅子とテーブルを設え、ホテル宿泊者以外の一般客にも開放できる、賑わいのある新しいビジネスホテルのロビー空間の活用を提案した。 レストラン奥の南側の庭には植栽を通して、豊臣期の石垣が見え、歴史を垣間見ることができる。 客室フロアの廊下は、特注柄のロールカーペットとした。 ボーダーは熊野の那智黒石、中央部は、熊野古道の石畳をデザインした。 また、室内のカーペットは、杉綾織柄とし、熊野の杉を表した。 客室は、茶室と捉え、天井の形状を「真行草」で表現した。 真を平天井、行を掛け込み天井、草をUB前の落天井とした。 斜めの掛け込み天井は鉄骨梁の振れ止めとの干渉を避ける役目をはたしている。 ベッドボードの壁面には、天井面とつながる木調の不燃壁紙とし、京都を示す竹アートを設置した。 窓際のベッドは親子ベッドになっており、トリプル利用も可能とした。 FFEの造作家具は、ラスティックさをイメージした木調のメラミン化粧板に黒いスチールフレームを組み合わせ、モダン和風のデザインとした。 FFEの造作家具照明は、竹を採用し、和のイメージを演出した。

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